有限会社オバラ建商【北海道帯広市・自然と健康と環境にこだわった建築資材販売会社】
補論・地元建築大工さん「悪性中皮腫」と診断
1.被災者 Mさん
    昭和30年生まれ(十勝管内) 昭和48年より建設業に従事
2.職業 建設業(下請け請負業)
    中学校卒業後、二年間職業訓練校に通う、住み込み大工として建設業界へ。
大工見習の初年度より、大型物件現場(ホテル)へ、そこではすでに鉄骨に岩綿
吹き付けが行なわれていた。以後、現場主体で今日にいたる。時代はオイルショック後であり、住宅建設急伸期に職人として従事する。主に木造住宅が主。
3.病名 「悪性中皮腫」
    診断・手術に到る過程

2004.12
現場にて胸部を打撲
2005.02

呼吸困難(咳き込み)、胸の痛み(胸を刺す痛み)を訴え病院へ
(本人は昨年の打撲が原因と思う)
初期診断は「肺水腫」。若いDrから「中皮腫」かもと言われた。

2005.04
一度退院 20日後再院し水(色は黄色)を抜く。
2005.06
入院。
レントゲン検査により、水は溜まっていない。
左肺の一部を検体として切除。
2005.06.26
検体の結果 主治医より「悪性中皮腫」と告知される。
2005.06.30
マスコミ・新聞報道でアスベスト関係が一斉に報道される。
2005.07.11 左肺全摘の手術。
現 在
抗癌剤投与と放射線治療により入院中。労災に関しては、労働基準監督署と折衝中。


4.労働環境
資料1は住宅着工数とアスベストの輸入量(消費量)を示す。消費の9割は建材製品が主な消費先。アスベスト(含有サイディング)の住宅への使用が本格的に始まったのは、十勝地方では1970年代後半以降で、当時の施工状況は(今日も)切断・加工に関しては集塵機・集塵マスク等は一切使用していない。また、スレート系軒天材、内部台所用不燃建材、更に天井用岩綿吸音板も同様の使用状況である。また、このような現象は、いわゆる物件ものと言われる大型工事現場(公共施設含む)においても大なり小なり同じような状態での施工である。このような環境下での被爆は現場関係者全てが対象者たり得ると考えるべきであろう。

 

■資料1.アスベスト問題考(輸入量と住宅の関係)

アスベスト
輸入量
全国住宅
着工数
北海道
着工数
十勝管内
着工数
サイディング類製造年
( )は中止年
昭和
西暦
単位:万トン
単位:万戸
単位:万戸
単位:千戸
 
35
1960
7.7
45.28
2,009
  K:カラーベストシングル(78)
36
1961
11.48
54.34
2,206
  K:コロニアル(86)
37
1962
9.66
60.3
2,407
   
38
1963
11.54
71.97
3,306
   
39
1964
14.39
76.46
3,647
  東京オリンピック
40
1965
13.35
84.51
3,708
   
41
1966
14.62
88.14
4,308
   
42
1967
18.87
104.18
5,109
  K:不燃サイディング(77)
43
1968
19.94
121.13
5,619
   
44
1969
23.71
140.77
5,796
   
45
1970
29.82
149.08
6,291
  NZ:アスロック(04)
46
1971
27.37
153.24
6,813
  D:フルベスト(78)
K:パーマートン(93)
47
1972
27.85
185.58
9,150
  N:のき天ボード(92)
48
1973
34.15
176.31
10,409
  第一次オイルショック
49
1974
35.21
126.12
6,314
  NH:モエンサイディング(81)
50
1975
25.3
142.77
8,225
  NO:耐火サイディング仁王(84)
51
1976
32.53
153.04
9,191
  K:エンボスサイディング(93)
吹付け石綿禁止
52
1977
30.06
153.19
8,372
   
53
1978
23.49
149.84
8,276
  A:「かべ一番」(04)
S:ラムダサイディング(04)
54
1979
29.15
148.66
9,123
  T:「完璧」(98)
55
1980
30.54
121.38
7,081
  旧環境庁石綿問題報告書
56
1981
23.79
114.27
6,934
  AG:「ほんばん」(89)
DA:真打S(92)
57
1982
22.91
115.71
7,252
   
58
1983
23.74
113.48
7,002
   
59
1984
23.97
120.71
7,027
  DA:真打E(02)
旧環境庁対策求める報告書
60
1985
26.16
125.09
6,352
  K:セラシティー(92)
61
1986
25.57
139.98
6,664
  D:マルチサイディング(00)
ILO石綿条約採択(日本は反対)
62
1987
27.72
172.85
8,809
  K:セラディール(92)
TS:セラディング(92)
「学校パニック」
63
1988
32.03
166.26
8,610
   
元年
1989
29.51
167.27
8,682
4.397
旧環境庁大気汚染
防止法で排出規制
2
1990
28.76
166.53
8,846
4.087
 
3
1991
27.2
134.29
6,237
3.36
 
4
1992
24.22
141.97
6,438
3.741
DA:真打G(02)
5
1993
20.98
150.97
7,349
4.147
 
6
1994
19.98
156.06
7,584
4.448
 
7
1995
19.14
148.46
6,903
4.719
青石綿・茶石綿全面使用禁止
8
1996
17.78
163.03
7,432
5.298
 
9
1997
17.62
134.13
5,755
4.132
TS:セラミックウォール(02)
S:ラムダUG(00)
10
1998
12.08
117.95
4,708
3.684
 
11
1999
11.71
122.62
5,167
3.541
 
12
2000
9.85
121.31
4,987
3.34
 
13
2001
7.94
117.31
4,788
3.191
 
14
2002
4.33
114.55
4,879
3.085
 
15
2003
2.46
117.36
5,072
2.955
 
16
2004
4,814
2.722
10月石綿製品原則禁止

※注釈・参考資料
( )は製造中止年。建築統計年報、(社)日本石綿協会その他
K:クボタ NZ:ノザワ D:松下電工 N:ニチアス NO:ノダ A:朝日石綿 TS:トステム S:昭和電工 T:東レ
AG:旭硝子 以上当時のメーカー名
現在は、合併・業務提携がすすみ会社名を確認の必要あり。
追加、DA:は大建工業で8月30日HPより。

施工現場での状況は、下請け業である限り、商品への選択肢はあり得ない。従がって、資料1にある各メーカーのサイディング類を含め、当時のアスベスト含有物は当然扱う事になる。現在、内装用下地である耐火ボードにも含まれていた事実も公表され、被爆の確率はさらに確かなものとなっている。

(文責 おばら)2005・9・12

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